一つ前の記事で個人的なオススメとした、ジャカルタ→バンドン間の鉄道移動。直近の週末で実践してきました。
乗車したのはArgo Parahyangan号。ジャカルタ=バンドン間を9往復/日する、インドネシアの鉄道会社PT.KAIの看板特急です。Paragtanganとはバンドンを中心としたスンダ文化の地域を指す固有名詞です。日本のJRと同様に、優等列車にはユニークな愛称がつけられています。
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★駅到着〜乗車(ジャカルタ・ガンビル駅)
今回乗車したのは、中央ジャカルタ・ガンビル駅を8:30に発車する Argo Parahyangan 第22列車。土曜日の朝発便ということもあり、出発一週間前にチケットを予約したタイミングではギリギリの残席でした。
ガンビル駅はジャカルタのランドマーク「モナス」のすぐ脇にある、ジャカルタの玄関口。とはいうものの、荘厳な駅舎があるわけではなく、高架線のごく普通の駅という感じです。ローカルな話題で恐縮ですが、埼京線の北与野とかそのあたりの雰囲気にちょっと似ています。
車寄せから駅構内に入ると、左手には予約センターと飲食店が、右手に切符の購入窓口とインターネット予約の発券機が設置されています。
今回は事前にインターネット予約をし、コンビニエンスストアで支払いを済ませていたので、発券機の方に足を進めればOKです。
この発券機、普通のPCにタッチパネル液晶とドットインパクトプリンターを組み合わせた代物で、予約番号を入力すると、ジジジジジとチケットが印刷されてでてきます。氏名と照合するわけではないので、ランダムに試していったら赤の他人でもチケットを印刷できてしまうではないか!と思ったりもしますが、乗車時にIDチェックがあるので無問題、ということなのでしょう。
チケットの発券が完了したら、飲食物を調達した後、チェックインカウンターへ。ここでチケットと予約時に登録した身分証の番号を照合し、他人が乗車できないようにチェックされます。
日本国内線よりよっぽど厳重なチェックじゃないか!という感じですが、セキュリティ上の施策というよりは、専らダフ屋対策的な側面が強いようです。インドネシアは空港でもダフ屋が出没する国ですから…そういえば、数年前までは屋根に乗る人をしょっちゅう見かけましたが、ここ最近は見かけません。インドネシアの鉄道は急速に現代化しているようです。
ガンビル駅では、長距離列車は1番線・4番線に発着します。2-3番線は近郊電車「Commuter Line」用に使われているようです。数年前までは通勤電車も同駅に停車していましたが、現在はすべて通過しています。ホーム幅が狭いので、収拾が付かなくなってしまったのでしょう。従って、「山手線で東京駅までやってきて、当駅始発の特急踊り子に乗り継ぐ」というような芸当は、インドネシアでは不可能です。事情は分からんでもないですが、ちょっと釈然としないですね。
さて、発車15分前を切った所で、我らがArgo Parahyangan号が入線してきました。機関車を先頭に、エグゼクティブ車5両、電源車荷物車を連結した7両編成です。一車両あたりの定員は約50名ですので、バス5台分の輸送力しかありません。これでは慢性的に混雑するのも頷けます…輸送力を柔軟に調整できるのが客車列車の強みなので、混雑時には増結を望みたい所です。
停車時間が短いため、満員の乗客も慌ただしく乗車。ただ、大荷物の客にはポーターがつきますし、そもそもインドネシアなので殺伐感はありません。見渡した感じ、ミドル〜アッパーミドルクラスの行楽客が殆どを占めている感じ。皆乗り慣れているようで、さしたる混乱もなく、指定の座席に収まっていきます。
★発車〜車内サービス
程よく車内が落ち着いた所で、汽笛一声ガンビル駅を発車。時刻をチェックすると、ほぼ定刻です。秒単位まで正確、ということはありませんが、この国のノンビリさ加減を思い知らされている者にとっては、ポジティブサプライズと言えましょう。鉄道マンは、インドネシア人の中でもパンクチュアリティの高い人々の集合体なのかもしれません。
ガンビル駅を発車すると、しばらくは高架線をノロノロと走行。高架を下りた所のマンガライ駅が平面交差のジャンクションとなっており、ここで詰まるのは最早お約束です。マンガライを過ぎると、俄然スピードをあげ、80~90km/h程度で快走します。
ジャカルタ市外に出たあたりで、車掌による検札がやって来ました。この列車はバンドン支社の管轄のようで、乗務員は男女問わずスンダ人らしい涼しげな顔立ち。車掌もニコニコ手早く乗車券のチェックを進めていきます。
愛想のよい車掌の後ろには、仏頂面の警察官が。不正乗車や犯罪者の乗車がないかチェックしているようです。いちいち検札に同行しなくとも、各駅のチェックインカウンター脇で検問をすれば十分な気もしますが、色々な利権が絡んで、合理化できないのでしょう。
面白いのは各車両の車端部に、車掌の顔写真&携帯電話番号入りプレートが設置されていること。果たしてどうやって活用するのかはよく分かりませんが、顧客サービスを向上させようとあれこれ頑張っている様は伝わってきます。
検札が一段落すると、今度はアテンダントが飲み物・軽食の注文を取りに回ってきます。これはチケット代金に含まれていません。有料です。小腹が空いていたので、アヤムゴレン(鶏の素揚げ)弁当を注文してみました。
ものすごく美味い!という訳ではありませんが、異国の地の列車で駅弁(?)を食べるというのは風情あるものです。衛生的にも一応大丈夫な部類であるようにみえます。
旧型電車の墓場、プルワカルタ駅
弁当を食べ終わって寛いでいると、途中停車駅のプルワカルタに到着。この駅はArgo Parahyangan号の車窓ハイライトの一つです。
ジャカルタ近郊の片田舎にあるプルワカルタ駅は、鉄道会社の廃車置き場。もう出番のなくなったエアコン無しの旧型電車が、子供のおもちゃのように積み上げられ、永い眠りについています。
日本人の感覚だと、危なっかしくて仕方がないですが、そこは大らかなインドネシア。通常時にはあまり見られない緻密さをここぞとばかりに発揮し、堂々の三段重ねです。解体費用をかけるよりも、このまま朽ち果てるままに任せた方が合理的だとの判断なのでしょう。
バンドン到着
プルワカルタを出ると、起伏に富んだ車窓から、列車が山間部に入ってきたことがわかります。棚田や時折姿を見せる渓谷を眺めていると、ノンビリとした気持ちになると同時に、眠たくなってきます。
飛行機と比較して、列車の旅は良く眠れるものですが、やはりこのArgo Parahyangan号に関しても途中の記憶が飛んでいます。車窓に民家が増えてきたなと思うと、もう終点のバンドン駅に到着です。
バンドン駅はコロニアルな雰囲気の地上駅。ホームに下りるとポーターが営業をかけてきますが、スカルノハッタ空港のそれとは異なりうざったい感じはありません。出札口を抜けると、数分前に予約したUberが丁度やってきた所でした。
感じの良い運転手に挨拶をし、今回の宿泊先であるCrowne Plaza Bandungに向かいます。