韓国の冷やし麺といえば、冷麺やビビン麺が有名です。
しかし、これらは実は冬の食べ物。牛骨スープ冷麺の本場は平壌、激辛唐辛子ソースを絡めて食べるビビン麺は咸鏡南道の咸興(はむふん)が発祥の地だと言われており、どちらも現北朝鮮地域の料理です。酷寒の北朝鮮で冬に冷麺を食べるのは極めて身体に悪そうですが、貴族や特権階級はオンドルでヌクヌクしているので、特に問題にはならなかったのでしょう。
他方、暖かい時期に楽しまれる冷やし麺の代表格といえるのが、今回ご紹介するコングクス(豆乳麺)。ほぼ無調整の豆乳に、コシのある小麦麺をぶっ込むというシンプル極まりない料理です。今回は、単純な製法故、素材の善し悪しが仕上がりに直結するコングクスの名店「チンジュチプ(晋州家)」を訪問してみました。
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チンジュチプ へのアクセス
チンジュチプ(晋州家)が所在するのは永登浦区汝矣島(ヨイド)。漢江に浮かぶ小島である汝矣島は、ソウルのマンハッタンと呼ばれています。国会議事堂やKBS、韓国証券取引所、韓国初の超高層ビルである63ビル等々、重要施設が密集しているため、このような呼称になっているようです。(米国の議会機能はワシントンDCにあるのでは…とか野暮なツッコミを入れてはなりませんよ!)
滞在していたフォーポインツバイシェラトン南山から汝矣島へのアクセスは、乗換なしの路線バスが便利。最近はGoogle Mapもバス路線の乗り換え案内に対応するようになり、分かりやすくなりました。今回は、最寄りの葛月洞停留所から、162番のバスで汝矣島へ向かうことに。(地下鉄利用の場合は5号線・9号線汝矣島駅の5番出口が至近です)
運行本数は非常に多いので、5分も待たないうちにやってきました。ガラガラだったので、運転手のおっさんの後ろに陣取って前面展望を楽しみます。ソウルの市内バスは、昔に比べると超安全運転になりました。
約20分で汝矣島に到着。ここからはマンハッタン散策を兼ねて徒歩でチンジュチプへ。
とはいうものの、マンハッタンというよりは西新橋っぽい風景ですね。ここを進んで、汝矣島百貨店(ヨイド・ペッカジョム)に向かいます。汝矣島エリアは碁盤の目のごとく道路が整備されているので、道に迷うことはないでしょう。
シブい!汝矣島百貨店!
やって来ました汝矣島百貨店。大分前のめりなネーミングとは裏腹に、実態はオフィスビル1Fの商店街というような出で立ちです。地下1階が飲食百貨店となっているらしいのですが、まずは1階から攻めます。
いやはや、コンセプト皆無の売場作りですね。衣料品から鉢植え、ガジェットまであらゆるタイプの小店舗が勝手気ままに出店する、アジア感満載の「百貨店」。天井の照明が妙に豪奢なので、昔はそれなりにエクスクルーシブな百貨店だったのかも。今となっては見る影もないですが。こういうトホホな商業施設、いいですねー。私は好きです。
地下に降りるエスカレーター脇は、一層カオスに。最早出店許可を得ているかどうかすら怪しいレベルです。ヒョウ柄の婦人向け傘の品揃えが妙に充実していますが、売れるのでしょうか。その前に、そもそも店主はどこに行った笑(この感じどこかに似ていると思ったら…新橋のカオスビル、「ニュー新橋ビル」に通ずるものがありますね。)
エスカレーターを降りた先の地下食堂百貨店もなかなかディープな雰囲気。雑多な裏方グッズが通路に積み上げられるという、典型的な庶民派食堂街の光景が広がっています。
今回訪問するチンジュチプはこの図でいうところの5,6,7番です。間口の広い大型店である事がわかります。流行っているのでしょう。
さて、チンジュチプのコングクス(豆乳麺)のお味は?
やってきましたチンジュチプ。もう昼食ラッシュも峠を越しているので、客の数もまばら。すぐに入店することができました。
テーブルの上には、コーン茶、塩こしょうがプリセット。とりわけ用の小皿も用意されています。なかなか気が利いています。名店の香りがしますね。とりあえず、Signatureメニューのコングクス一丁を注文します。
KBBA部隊が一心不乱に箸とスプーンを磨いています。カシャンカシャンやかましいですが、如何にも韓国の気取らない食堂といった雰囲気で良いものです。(そのままの流れで、賄いも食い始めそうな勢いです)
そんなKBBAシルバー磨き部隊を観察していると、銀の器に盛られて、コングクスがやって来ました。そそっかしい料理人が、ビジソワーズの中にそうめんをぶっ込んでしまったようなルックス。
まずは、慎重にスープから。
うーん、濃厚です。予想以上に豆豆しいといいますか。ただ、市販の無調整豆乳のような変なえぐみはなく、上質な大豆を使って丁寧に作られた豆乳スープであることがわかります。出汁で割っている様子はなく、ほぼ100%豆乳でしょう。豆由来のほのかな甘みを楽しむスープです。
店によっては細かく砕かれた氷が入れられていることもありますが、豆乳が薄まるのを懸念してか、この店では氷なし。本当に濃厚です。卓上の塩こしょうをすこし振っても良いかも知れません。私はそのままでいっちゃいましたが。
麺の方はハサミの入った韓国らしいスタイルで盛り付けられています。にゅうめんっぽい見た目ですが、しっかりとしたコシがあります。韓国の麺は冷麺用の麺を除くとコシがあまりない印象なので、このしっかりとした食感は珍しいです。濃厚な豆乳スープとよく絡み、美味。人気店であるのも頷けますな。
あと、特筆すべきは一緒に出てくる突き出しのキムチ。切り干し大根と白菜の併せ盛りで、甘めのヤンニョムが美味い!漬かり具合自体も浅めで、あまり酸味が前に出ないタイプのキムチなので日本人ウケする味わいだと思います。これ単体で食べるのもウマーですが、半分くらい食べ進んだところで麺の方にも投入し、マジェマジェして食べると、また違った味わいになって2倍楽しめます。
スープがぽってりしており、麺も結構大盛りなので、かなりお腹に溜まります。若干後半の方は飽きてくるので、同行者が居たら冷麺や別の種類の麺を注文してもらい、小皿でシェアするのが良いでしょう。
お腹いっぱいになって、確かお会計はKRW10,000。韓国の麺料理としてはかなりエクスクルーシブな値付けですが、使われている素材の良さを考えると異論なしの値付けです。
地図
まとめ
シンプルな料理を真面目に、丁寧に作っている良店でした。こういう店って韓国にはなかなか少ないんですよ。美味しかった店が、久しぶりにいくと大改装して、変な方向に暴走してたり。そういう欲目とは無縁な感じの、素朴な店です。いつまでもこういう雰囲気で続いていけばよいのですが。
日本語、英語メニューはぱっと見た感じなさそうでしたが、店員のKBBAも素朴でいい人でした。オフィス街につき、ラッシュ時は野戦病院状態になりそうなので、ピークを外して訪問されることをオススメします。KBBAも色々と世話を焼いてくれると思います。