先日のフォーポインツ・バイ・シェラトン南山での滞在時。夕食がユナイテッド航空謹製のサンドイッチだけだったため、深夜に小腹が空いてきました。
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おいしいローカル食堂を探そう
ときはもう既に23時近く。フロントのスタッフに
「ローカル感満載で美味い食堂を教えてくれー!」
と尋ねると
「ホテルの裏手に庶民的な飲食店街があるけど、今日は日曜の夜だから早めに店じまいかもですニダ」
とのこと。
なるほどなるほど、とホテルを出て、教わった方向に向かって歩き始めます。
確かに飲食店街はあるものの、展開されている宴の様子を観察すると、もはや最終コーナーを曲がってしまっている感じ。
そんな雰囲気の中、焼肉屋に単身入店して「サムギョプサルくれー!」と叫んでも、チリチリパーマの所謂KBBAから、俄に宇宙人を見てしまったかのような視線を浴びるのが関の山です。
しかしこういう街には、最終コーナーの先があるはず。彷徨える酔っ払いKJJIを回収する、トロ箱のような店があるはず!!と美味い店アンテナの感度を高めながら歩き続けること5分。ありました、おいしそうな豚骨の香りを裏通りに漂わせている24時間営業の「ハルメ スンデクック」が!場所は大体このあたり。
おいしい!ハルメ スンデクック
(店舗外観画像はこちらからお借りしました)
ハルメとは釜山などの慶尚道地方の方言で「おばあちゃん」の意。テジクッパプに代表される、豚骨系のスープ料理は釜山がおいしい!のでこの店もきっとイケてるに違いない、と入店を決意します。
大学時代、アグレッシブな韓先生という女傑韓国語教師に、しょっちゅうシバかれながら韓国語を学びました。第二外国語とは思えないハードさの授業でしたが、こういったところでちょくちょく役に立ち、畏敬と感謝の念は日々強まるばかりです。
さて、勢い込んで入店すると、予想通りの雰囲気。完全に出来上がってしまったKJJIの終着駅です。日本の酔っ払い(JJJI)もそうですが、このフェーズになると最早相手の言うことなんてまったく聴いていません。めいめいに好き勝手なことをまくし立ててますね。おまけに声が大きいので、やかましくてしかたがないですが、こちらは飛び込みの外国人。空気を乱さないようにそっと着席することにします。
【主要メニュー】
・スンデクック(豚の血ソーセージ入り豚骨スープ):5,000KRW
・ヘジャンクック(二日酔い解消スープ):5,000KRW
・ポッサム定食(豚の茹で肉定食):7,000KRW
・茹で肉各種盛り合わせ:12,000KRW
・焼酎:3,000KRW
・ビール:4,000KRW
全体的に安価です。物価が上がったソウルの都心では、かなりお財布に優しいプライシングだといえましょう。
スンデは結構クセがあって好みが分かれる食べ物です。私は好きですが、深夜にスンデはちょっともたれるかも?ということで、ポッサム定食を選択しました。ポッサムは豚バラ肉の茹で肉なのですが、うまいこと脂が抜けていて、見た目よりもずっとあっさりしているのです。
店内はこれぞ庶民の韓国料理店、という感じ。スープの味を調整するための唐辛子、食塩、アミエビの塩辛もばっちり卓上に準備されています。時折、若いカップルや主婦風のKBBAがスンデクックをテイクアウトしていきます。地元の人々に愛されている店である事がよく分かりますね。
そんなこんなで、チリチリパーマのKBBAがポッサム定食を運んできました。メインのポッサムに、ご飯と豚骨スープ、キムチなどの突き出しが4品ついた標準的なセットです。
ポッサムはしっとりプルプルに仕上がっており、脂も良い具合に抜けています。おいしい。この価格から考えるとバリューだと言えましょう。通常のキムチよりも甘めのヤンニョムで漬けられているポッサムキムチとともにサンチュで包んで頬張ると、いやーソウルで乗り継いで良かった!と小躍りしたくなります。
さて、スープ。この国の常で、豚骨のスープは殆ど味が付いていない状態でサーブされます。これに唐辛子ペーストと塩を足して好みの味に仕上げるのです。塩味の調整には食塩とアミの塩辛がありますが、オススメは抜群に後者。豚とアミの塩辛はなんだか知りませんが、合うんです。
恐るべしKJJI(KOREAN JIJII)との遭遇
うまーい!といいながら、ポッサム・スープ・ご飯を交互に頬張っていると、何やら視線を感じます。通路を挟んで向かい側のKJJIがじーっとこっちを見ているのです。奥ゆかしい日本人とは別の人種です。いくら酔っ払いとはいえ、ここまで無遠慮な視線を送ってくる日本人は、なかなかいないでしょう。曖昧な視線と会釈を返すと、
「おいハクセン(学生)!そういうときな、ご飯はスープに入れるもんだ!そうじゃないと美味くないだろ?な??」
そう、韓国人はスープにご飯をぶち込まないと気が済まないんですね。日本人としては、基本別々に食べて、最後にご飯の1/3くらいをスープに入れて雑炊風に楽しむ、という2WAY方式が好ましいのですが、このKJJI、私がスープにご飯をぶち込むのを見届けるまで解放してくれないに違いありません。
根負けして、残りのご飯をスープに突っ込む様を確認すると、KJJIは満足げに頷き、もはや目の焦点が合ってるかすら怪しい相方との「会話」に戻っていきました。この押しつけがましさは、まさにKJJI。海外でやられると激しく閉口ですが、ここは彼らのホームグラウンドである半島の中枢。異端者は駆逐の対象となっても、文句は言えません。
雑炊状態のスープとポッサムを完食して会計を済ませ、KBBAに挨拶をして店を出ると…なにやらさっきのKJJIが追いかけてきます。また何か地雷を踏んだか!!と戦々恐々と振り返ると、満面の笑みで名刺を渡してきます。
なにやら、近隣で済州島産の黒豚専門焼き肉店を経営しているそうで、
「明日是非食べに来い、サービスするぞ!」とのこと。
「いやー、もうソウルを発つんで今回は難しいんですよ、おじさん」と返すと
「なんだそりゃ残念だなー。ときにな、この単語って日本語にするとなんだ?」
もうKJJIの典型ですね。良い意味でも悪い意味でも対話になってません、話の流れに脈絡がゼロです。しかも、示してくる単語が、日本語で言う「塩焼き」。恐らく、彼が経営する店の日本語メニューで、翻訳し忘れてしまった箇所があったのでしょう。
行きつけのスンデ屋でポッサムを頬張る謎の日本人と遭遇するや否や、これ幸いと翻訳をやらせちまえ!というバイタリティ…脱帽です。このあたりの気風の違いに、日韓が上手くいかない根本的な原因があるような気がしますが、こういう人たちが居る世界も、なかなか面白いのではないでしょうか。
4月とは言え、夜のソウルは肌寒いので、適当な所で切り上げ、KJJIとはお別れ。徒歩でホテルまで戻ったのでした。
若干話が横道に逸れましたが、このハルメ スンデクック、リーズナブルでおいしいですし、表通りとはガラッと異なったディープなコリアが楽しめるオススメの食堂です。
ここ最近の韓国文化は作り物感満載で、あれを楽しめるのはモノを知らない新興国の消費者くらいだろ、と常々思っているわけですが、こういうアジア感溢れる雰囲気こそがリアル・コリア。ぜひ、こういうのも海外に発信していってもらいたいものですな!!