ジャカルタを走る元日本の車両としては、JR東日本や東京メトロの車両が走る近郊鉄道が有名です。一方で、日本からの中古路線バスも一定数存在します。
鉄道と比較して車両自体の寿命が短く、メンテナンスパーツの供給難もあって急速に運用台数を減らしている、ジャカルタの日本中古路線バス。HDDを整理していたら昔の画像が出てきましたので、簡単にまとめておきます。
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風前の灯火!PPD(ジャカルタ特別州旅客輸送公社)45系統
最初に取り上げるのはジャカルタ市内を走るPPD 45系統。リトル東京ともいわれるブロックM地区に隣接する、BlokMバスターミナルからCawang経由でUKI(インドネシアキリスト教大学)までを結ぶ路線です。
表向きはその先PGC Cililitanまで路線が続いているはずで、全面の行き先表示もそのようになっているのですが、そこはインドネシアクオリティ。併走するTrans Jakartaの開業に伴って、全てUKI止まりになっているようです。
PPD45系統は、元々ほぼ全車が日本中古車で運行されており、フリートの中核を担っていたのは名鉄バスのエアロスターMでした。
上記の写真はいずれも2012年の撮影ですが、この時点で既に激しく傷んでいます。車号から判断するに1988〜89年式のP-MP218Mが主で、名鉄で15年以上酷使された後、インドネシアにやってきた車両。老体に鞭打つも空しく、どんどん運用から離脱していきます。
整備士のおっさん曰く、中古パーツが輸入できないので、調子が悪くなると共食い整備に頼る他ないとのこと。三菱ふそうのバスはトランスミッション周りの脆弱さが泣き所で、ここが壊れて運用から外れてしまう事例が多いんだとか。
この45系統の車両は元他事業者の車両に関しても名鉄塗りにリペイントするのが流儀となっているようで、元京王、神奈中、臨港などバラエティに富んだ車両が名鉄カラーで頑張っていました。
後方にあるPARIWISATAとは「観光」という意味。どうやら日本の路線バス同様に、貸切運行も可能だったようです。一度やってみればよかったと、今更ながら後悔しています。
2016年春時点で稼働が確認できたのは元臨港バスのいすゞ車。排ガス規制がU-代の車両で、名鉄や神奈中の車両より一世代後の車両だということも影響しているのでしょう。
このタイプは複数台存在するようですが、恐らくはこの車両が同路線最後の日本中古バスです。実際に乗車した限り、エンジンやミッションの調子もよく快調な走り。まだしばらくは行けそうですが、並行してTransJakartaの工事が行われているのが気がかりです。これが開通したら、一気になくなってしまうかも。
この路線の車両は全て南タンゲラン市CiputatにあるA車庫に所属しています。この車庫はGoogleMapでつぶさに探すと割と簡単に見つかりますので、興味のある方は探してみて下さい(この車庫には廃止になった46系統で使われていた車両の廃車体も大量に放置されています)
こちらはおまけ掲載のPPD P67系統。BlokMとPasar Senenを結ぶPatas(快速)系統でした。激しく渋滞している中、適当な場所で乗り降りを繰り返しているので、どこがPatasなのか不明な謎路線でした。
2014年頃まで小数が現役でしたが、知らぬ間に路線毎廃止に。目抜き通りのThamrin通りを走る日本車はこの路線のみだったため、非常に残念。
深夜、Senayanロータリーでぼんやりと光を放ちながら客待ちをするP67系統の様相は、さながらホラー映画の幽霊バス。残業後の帰宅時に遭遇すると、なんとも言えない気分になったのでした。車両そのものは、下記の43系統に転用されていると推測されます。
まとまった台数が運行中 PPD(ジャカルタ特別州旅客輸送公社)43系統
まだまだまとまった台数の日本車が運用されているのが、PPD 43系統(Tanjung Priok バスターミナル〜Sunter〜Pulo Mas~UKI~PGC Cililitan)です。
並行してTransJakarta 12系統という新規路線も走っているのですが、停留所が密にあり、運行本数も多い43系統を選好する乗客が多いようで、いつ乗っても混んでいます。
エアコン付きでガラガラのTJがRp.3,500、満員のオンボロバス43系統が Rp.4,000と、料金的にも逆転してしまっているため、日本人的には理解しがたい状況です。
こちらの路線で運用されているバスは元都営バスの車両がメイン。三菱、日野、いすゞとバランス良く運用されています。
一台だけ混ざっている異端児が、元JRバスのこの日野車。丁寧にリペイントされ、正面にはメルセデスロゴ(笑)大事にされている様が見受けられます。
都営の車両は元々のコンディションが良いので、45系統に比べると走行性能は総じて良好。気まぐれに高速道路を走ってみたり、アグレッシブな走行が楽しめます。
難点なのは、工業地帯を走るため、沿線(特に北半分)の雰囲気が芳しくないこと。写真を撮るならば、PGC Cililitanで折返し待ちをしている所を撮るのが良いでしょう。
反対側のTanjung Priokターミナルは港に近いこともあって、退廃的な雰囲気が漂っています。また、一部途中で折り返す便もあるので、ここで写真撮影を行うのは得策ではありません。
都市間高速路線で運用!Agramas C系統
これまでご紹介してきたPPDとは異なり、Agramasは民営のバス会社。市内バスではなく、ジャカルタ広域都市圏内を高速道路経由で結ぶ路線を複数運行する企業です。
日本の中古バスが投入されているのは、その中でも主にC系統。
Porisバスターミナル(タンゲラン市)= BSD City =(高速経由)= Kampung Rambuhtan バスターミナル(南ジャカルタ市)=(高速経由)= Bekasi Timur = Cikarang ターミナルという都市間高速路線です。
ジャカルタ市と東西の工業都市をネットするこの路線は、全線乗車すると片道2時間以上かかる長丁場。時間帯を問わず乗車率は高く、Agramasにとってもドル箱路線であるように見受けられます。
Agramasはなかなか金回りの良い会社で、日本からの転入時に側面窓の固定化や客室床の嵩上げ(まさかのスリーステップバスに改造されているのです!)といった思い切った改造工事が行われています。
シートもインドネシア標準の2-3ハイデンシティ仕様に換装。快適性よりも着席率の向上を主眼とした設計になっています。
転入から10年以上が経過していますが、冷房装置もちゃんと稼働しており、壊れたら壊れっぱなし!な貧乏PPDとは異次元な感じです。
元々は4メーカー全て揃っていましたが、2016年初時点で稼働していた車両は日野が中心。全体の8割くらいが日野車で占められているような印象です。日野のバス・トラックはインドネシア国内での販売も非常に多いので、パーツの調達が容易であることも影響しているのでしょう。
稼働している車両の出自は、最大勢力が京阪バス、ついで京成と名古屋市営といったところでしょうか。
ここ最近は徐々に中古バス比率が減り、日野シャーシ+ローカル車体の新車が増えつつあります。元々の設計時には考えられなかった運用(片道70km以上の高速道路運行+激しい渋滞の中でのストップ&ゴー)を長年続けていることを考えると、致し方ないでしょう。
運用を離脱した車両のうち、まだ走れるものはPoris=BSD=Cibinong線に転用されているようなので、写真撮影をする場合は、Porisバスターミナルがオススメです。ジャカルタの都心からもさほど遠くなく、乗客の数も少ないため治安良好です。
なお、この系統はKampung Rambuhtanを経由しますが、ターミナル内には入りません。高速道路の側道での乗降になりますので、ターミナルの中で待っていても撮れませんのでご注意下さい。
完璧な原型をキープ!元名古屋市営の工場従業員送迎バス
工業地帯で従業員輸送に就く車両には、コンディションの良い車両も存在します。
今回ご紹介するのは、Agramas社のKarawang車庫を訪問後に偶然見つけた、元名古屋市営の三菱エアロスターM。型式はU-MP618Nでしょうか。
外観は下回りに若干の錆が浮いているものの、非常によいコンディション。全面ラッピングを施していたところ、下半分だけ剥がしたような印象をうけます。
外観をバシバシ写真におさめていたら、どこからか運転手のオッサンがやってきました。中も見せてよー!とお願いすると、快く招き入れてくれるのがインドネシアクオリティ。
内装も名古屋市営時代ほぼそのまま。カーテンは取り替えられていますが、今はなき那古野営業所の路線図と「私はまごころサービスにつとめます。」という運転手の名札差しが泣かせます…シートには、オリジナルのモケットと同じ色のカバーが掛けられ、非常に大切にされていることがわかります。
オッサン曰く、乗り心地・エンジンともに絶好調とのこと。末永い活躍を期待したいところです。
ジャカルタの日本中古バス まとめ
一般報道でも時折取り上げられるくらいメジャーな中古電車の影に隠れ、地味な存在のジャカルタの中古バス。終焉の時はそう遠く無さそうですので、撮影したい方はお早めに。
撮影地、車庫の場所等知りたい方は、メールアドレスつきでコメントをいただければ、こっそりお教えします。
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