(画像出典:Airliners.net)
マレーシア航空が満を持して導入中の最新鋭機材、エアバスA350-900。本来的にはロンドン線を始めとする長距離花形路線に投入される機材ですが、1月の中頃までリージョナル路線で「慣らし運転」を行っています。日本路線への投入も予定される「期待の新人」はどんな機材なのでしょうか。まずはエコノミークラスの搭乗記です。
マレーシア航空A350-900についてのざっくりとしたまとめ
マレーシア航空のエアバスA350-900は、同社長距離路線の次世代を担う中型機です。2017年11月に納入された初号機である9M-MABを皮切りとし、2018年3月頃までを目処に合計6機の導入が予定されています。
客室のコンフィギュレーションは、
ファーストクラス:4席
ビジネスクラス:35席
エコノミークラス:247席(うち27席は Extra Leg-room Seat)
(シートマップ画像出典:Australian Business Traveller)
の286席。長距離路線への投入を主眼としていますから、非常にゆったりとしたコンフィギュレーションになっていることがわかります。
定期路線での初就航は、2017年12月9日のクアラルンプール=ペナン線。その後はバンコク線やコタキナバル線といったASEAN域内リージョナル路線で慣熟運航を行った後、2018年1月15日より真打ちのロンドンヒースロー線への投入が予定されています。
現在A380-800でダブルデイリー運航されているLHR線のうち、まずは1往復がA350-900に置き換えられ、2018年3月15日には残りの1往復もA350-900化が完了。2018年1Qの終了を待たずして、A350-900はマレーシア航空のフラッグシップと相成る予定です。
なお、同社のA350-900の投入ペースは急ピッチで、2018年3月中には全6機の納入が完了します。この為、我々にとって身近なクアラルンプール成田線でもその姿を見られるようになるのは嬉しい限り。その初就航は2018年5月5日で、まずはデイリー運行のMH88/89便がA350化。週3便運航のMH70/71便もおよそ1ヶ月遅れてA350-900への機材変更が予定されています。
前置きはこのぐらいにして、実際のマレーシア航空A350-900 によるフライトはどんな様子だったのか、見ていきましょう。
マレーシア航空 MH1138便 クアラルンプール→ペナン チェックイン
実は、クアラルンプール国際空港(KLIA)からマレーシア航空の国内線に搭乗するのは今回が初めて。バンコクにおけるタイ国際航空のように、国内線専用のカウンターが存在するのかと思いきや、国際線と同じカウンターでチェックイン手続きが行われています。
マレーシア航空のFFP「エンリッチ」のプラチナ会員ならびにワンワールド各社のエメラルド会員専用のチェックインカウンターはD1-D5番。ここで預け荷物のチェックインと、搭乗券の発行をしてもらうことにします。
チェックイン担当スタッフは、テキパキとした造作が印象的な20代のマレー系お兄さん。マレーシア航空のグラウンドスタッフは平均的に気怠い雰囲気を醸し出しているイメージですが、朝早い時間帯ということもあってか、彼はやる気を全身から漲らせていました。
え「今日の便、結構埋まってます?」
マレー兄「いや、そんなでもないっすね。てか、今日のこの便はワイドボディなので、余裕のキャパシティなんですよ。お客さんの隣の席も空席ですから、ゆったり飛んで下さい」
え「しってるよー。ピカピカのA350に乗るためにこの便を予約したんだから〜笑 で、今、何機運用に入っているの?」
マレー兄「えーと…確か、2機…?…(横にいる仲間とごにょごにょ相談)…あ、やっぱり2機みたいです。今後ドンドン増えますけどね。いい飛行機なんで、楽しんで下さい!!」
という言葉と共に、本日の座席である14Dが記載されたボーディングパスが手渡されました。
なお、マレーシア航空A350-900のエコノミークラスのうち、最前列3列は “Extra Leg-room Seat”と銘打たれた、足元広々シートになっています。予約を入れたタイミングでは、この区画は選べないようになっていましたが、オンラインチェックインのタイミングで指定ができるようになりました。
今後この”Extra Leg-room Seat”がどのような運用になっていくのかは不明ですが、現時点ではA350-900において、特別なブッキングクラスが新設されている様子はありません。従って、①エンリッチ上級会員/ワンワールド他社上級会員優先区画 ②オンラインチェックイン開始のタイミングで早い者勝ち というような運用になってくるのではないのかな…?と推測しています。
チェックインカウンターは国内・国際共通ですが、そこから先の導線は勿論別々。Domesticの表示に従ってずんずん進んでいきます。
国際線では各ゲートでのセキュリティチェックを採用しているクアラルンプール国際空港ですが、国内線は搭乗券チェックの直後に控えている集約型セキュリティチェック1回だけ。ピークシーズンであるにも関わらず拍子抜けする程空いており、5分もかからずにエアサイドに抜ける事ができました。国内線需要の多くを賄うのは、KLIA2を発着するエアアジアグループの便だということでしょうか。
クアラルンプール国際空港 国内線ターミナル ゴールデンラウンジ
カーペット敷きの売店エリアを抜け、国際線乗り継ぎ用の出国審査カウンターを左に臨みながらしばらく進むと、マレーシア航空国内線ゴールデンラウンジに到達します。このラウンジも国際線本館ラウンジと同じタイミングで改装工事を受けており、非常にフレッシュな雰囲気です。
インテリアの基本コンセプトは国際線ターミナル本館のゴールデンラウンジと共通。アジアンな雰囲気を保ちながらも、モダンかつ落ち着ける佇まいになっています。シーティングエリアには、USB充電ポートやコンセントも完備。また、先客が居たため写真は撮れませんでしたが、フードコーナーもホットミール含めそれなりに充実しています。滞在時間がさほど長くならない国内線ラウンジとしては必要十分以上の仕様です。
窓の外には、ずらり並ぶマレーシア航空機が。時間帯によるのかもしれませんが、国際線側と比較してライオングループの占める割合が少ないような気がします。手前から3機目に停まっているのが、本日の搭乗機 9M-MAC。2017年12月23日に納入されたばかりのピカピカの機材です。1号機の 9M-MAB は通常のマレーシア航空塗装ですが、この 9M-MAC はマレーシア国旗を大胆にあしらった「Negaraku」特別塗装。Negaraku とはマレー語で「わたしの国」を意味し、ナショナリズムが前面に押し出された特別塗装である事が分かります。このあたりはナショナルフラッグキャリアならではと言えましょう。
マレーシア航空 MH1138便 クアラルンプール→ペナン エコノミークラス
出発時刻30分前にゲートに到着すると既に搭乗が始まっていました。Negaraku 特別塗装をカメラに収めたところで、少々慌ただしく機内に入る事にします。
既に優先搭乗は完了していましたが、この通りビジネスクラス区画はガラガラ。本日のビジネスクラス乗客は定員39名のところ、1名だけだったようです。正味の飛行時間が30分程度の超短距離路線ですので、致し方がないですね。
誰も居ないビジネスクラスを尻目に、指定されたエコノミークラスの14Dに着席します。先述の通り、マレーシア航空A350-900の12,14,15列目は”Extra Leg-room Seat”となっており、足元広々です。詳細なスペックは公開されていませんが、シートピッチは目測で35-36インチといったところでしょうか。JALの新間隔エコノミーを上回る、贅沢なシートピッチとフットレストが奢られています。
シートの座り心地は、これまであまり体験した事のないムニムニした感じ。個人的には悪くない印象でしたが、少し評価の分かれるタイプのシートかもしれません。またー、フットレストの板が非常に華奢で、マレーシア航空の平素の客層を考慮すると、そう遠からず破損する気がします。現時点では無論どこかしこもピカピカであるわけですが、これをどう維持できるか、メンテナンス部門の力量が問われるように思います。
機内エンターテインメントシステムも、新仕様のものが装備されています。クアラルンプールのランドマークである、ペトロナスツインタワーが要所要所で登場するのが、マレーシアらしくて良いですね。
依然としてレトロな絵柄のセイフティカードとは対照的に、セイフティデモのビデオは新調されています。乗客の注意を引くために、ユニークな趣向の凝らされたものが増えつつあるセイフティデモビデオですが、マレーシア航空のそれは極めてオーソドックス。撮影に使用されている機材はA330-300のように見えるので、もしかするとA350-900だけでなく、他の機材も同じタイミングで新バージョンに更新されているのかもしれません。
セイフティデモが完了したタイミングで、ムスリム乗客各位に心の平穏をもたらす「お祈り画面」が表示され、いざペナンに向けて出発です!
エアマップの機体にポリゴンが貼られておらず、真っ白けなままになっている詰めの甘さは、マレーシアクオリティでしょうか。
マレーシア航空 MH1138便 クアラルンプール→ペナン 機内サービス
クアラルンプール国際空港の滑走路混雑により、若干遅れ気味に離陸したマレーシア航空MH1138便。飛行時間は離陸後30分という事で、ベルト着用サインが消灯されるや否や、すごい勢いで機内サービスが開始されます。
超短距離の国内線フライトという事で、提供されるのはお馴染みのMHピーナッツとオレンジジュース。カートにはコーヒー・紅茶とおぼしきドリンクも搭載されていましたが、キャビンクルーの皆さんが忙しそうにしているのをみると、ちょっと注文が憚られます。
なお、この便のクルーはベテラン揃い。最新鋭機の乗務資格を得られるのは、シニョリティの高い長距離路線担当クルーであることが伺えます。マレーシア航空では、一定以上の年齢の長距離路線担当クルーと、若いリージョナル担当クルーの間で、サービスの質が大きく異なります。今後暫くの間、A350-900運航便においては、マレーシア航空の中でも相対的にハイレベルなサービスが期待できそうです。
ピーナッツをついばみ、オレンジジュースを飲み干したあたりで、MH1138便は早くも降下を開始。ゴミ回収が完了すると、眼下には熱帯の海が広がっています。
なお、マレーシア航空のA350-900には機外カメラが装備されています。これ自体は近年導入された機材としては平均的な仕様だといえますが、特徴的なのは画角が真下方向に固定されている事。前方+垂直尾翼カメラからの俯瞰の2視点を楽しめる機材が多いなか、マレーシア航空のそれはズバリ真下しか映しません笑 ギアダウンしたら前方表示に切り替わるのかな?と思いきや、まさかの下方表示固定。
画面に広がるさざなみがどんどん大きくなってきたと思うと、突如として滑走路が姿を表し、軽い衝撃と共に着陸。30分のショートフライトを終えて、ペナン国際空港に到着したのでした。
到着後はすぐにPBBが装着され、降機。南国の空港ですが、思いの外キビキビとしたオペレーションが展開されています。
通常よりも大型の機材で運航されていることもあり、預け荷物が流れてくるまでに若干時間がかかりましたが、流れてくる順番はプライオリティタグ通り。東南アジアにおいては、こういう「当たり前」が期待できない事も多いわけですが、ここペナン国際空港においては、及第点以上の仕事ぶりが確認できました。
マレーシア航空の最新鋭機 A350-900に乗る!! MH1138便 クアラルンプール→ペナン エコノミークラス搭乗記のまとめ
当初の期待通りの、非常に快適なフライトでした。マレーシア航空のA350-900は、競合他社の最新機材に対し、コンペティティブなハードを搭載しています。特に “Extra Leg-room Seat”のシートピッチは非常にワイド…というか、他社プレミアムエコノミーに近い水準で、「ここが指定できるのであればビジネスじゃなくても全然問題無いかもなぁ」と思わせてくれるレベルです。この機材が投入される中・長距離路線においては十分な競争力を持つ機材だと言えましょう。
次回は、このマレーシア航空A350-900のビジネスクラスでペナン→クアラルンプール→バンコクと飛びます。本機材のプレミアムキャビンを続けてレビューしますので、乞うご期待です!