「火事と喧嘩は江戸の華」とよくいいますが、これに倣うと「インボラアップはCXの華」だと言えましょう。
元々購入したクラスよりも、上のクラスに案内されるインボラアップグレードはいつ貰っても嬉しいものです。今日は、キャセイパシフィック航空のインボラアップグレードの発生条件と、優先順位の通説、私&周囲の体験談をまとめた記事を投稿します。
Sponsored Link
インボラアップグレード(Involuntarily Upgrade)とは?
航空会社サイドの都合により、搭乗客からの申し出や追加料金の支払いなしに、元々予約購入した客室クラスよりも上位のクラスに案内することをインボラアップグレードと呼びます。英語圏ではOperational Upgrade (OP-UP)という呼称が用いられることも多いようです。
顧客が幾ばくかの追加料金を支払うことにより、上位クラスへのアップグレードを希望する場合や、マイルを使ったアップグレードとは、搭乗客サイドの自発性の有無によって区別されます(これらのアップグレードはVoluntarily Upgradeというカテゴリーに分類されます)
キャセイパシフィック航空のインボラアップグレード
かねてより、キャセイパシフィック航空はインボラアップグレードの発生確率が高い航空会社だと言われてきました。私はマルコポーロゴールドとシルバーをそれぞれ2年ずつ体験しましたが、ゴールド会員時代のエコノミー→ビジネスのインボラアップグレード率は30%程度あったように記憶しています。
混雑する一方で、上級会員のあまり多くないリージョナル路線(ジャカルタ線、名古屋線)を中心に搭乗していたという条件も影響しているとは思います。しかし、一般的な航空会社と比較してその確率が相当程度高いことは、論を待たない所でしょう。
インボラアップグレードの発生条件
キャセイパシフィック航空におけるインボラアップグレードには、大きく分けて二種類があるとされています。
①下位クラスがオーバーセルする事による、アップグレード
②誕生日/マルコポーロ入会X周年等に関連するアニバーサリーアップグレード
②については、話が少々複雑になってきますので、解説をまたの機会に譲ることとします。今回は①について整理していきます。
キャセイパシフィック航空では、搭乗クラスがオーバーセル(オーバーブッキング)状態になっていないと、①のインボラアップグレードのチャンスはありません(読んで字のごとく…ですね)
ご承知の方も多いかと思いますが、一般に航空会社は実際の定員よりも多めに予約を取る、ということをしばしば行います。これは、予約をいれたものの当日空港に現れないNO-SHOW客を見越したうえでド満席運航し、一便当たりの収益を極大化する為のオペレーションです。
このオペレーションを行う上で肝要なのは、過去のデータに基づいたキャンセル・NO-SHOW率の見積です。場合によっては最終的は担当者の勘に頼らなければならないケースもあるのでしょう。
一利用者として感じるのは、キャセイパシフィック航空は、他の航空会社と比較してこの見積が著しく強気であるということです。見積が強気というのは、すなわちキャンセル率を高めに見込み
「まぁ、これでエコノミーがあぶれちまったら、上級会員インボラさせて、そんでもダメなら積み残しちゃおう」
という方針がベースにあるのではないかということです。
堅く見積もった結果空席多数で飛ばすことによる機会損失とインボラアップ・積み残し対応(振替、ホテルの手配等)による追加コストを天秤に掛け、機会損失>追加コストだから、強気で行った方がトクや!という計算なのでしょう。
(一方、真逆の考え方でオペレーションを行っていると考えられるのは日系2社です。客に罵倒されるのは、彼らにとって極力避けたいことでしょうから、キャセイよりも大幅に安全側に振ったオペレーションをしていることはほぼ間違いありません)
積み残される乗客としてはたまったものではありませんが、積み残されるのはオンラインチェックインしてない、ブッキングクラスが著しく低い(アジアマイル加算不可クラス)かつノン・ステイタスというような、当該便におけるカースト最下層(相変わらず言葉が悪い!)の乗客だと推測されます。
とはいうものの、この記事を読んでいるような方が、上記の三要素を満たすとは考えにくいですね。基本的には「満席のキャセイ便に乗ると、良い方に転ぶことが多い!」と考えて間違いないと思います。
キャセイパシフィック航空におけるインボラアップグレード優先順位
めでたく(?)インボラアップグレードの発生が整ったとき、上位クラスに案内されるのは、どのような条件を備えた乗客なのでしょうか。
キャセイパシフィック航空にのアップグレード優先順位に関しては、いわば「通説」とされる定義があります。恐らく「中の人」のリークによるもので、例えばFlyertalkだと、この記事に掲載されています。
この通説が現れてから結構な期間が経過していますが、現在の所これを覆すような新説はでてきていません。従って、それなりの信憑性があると考えて良さそうです。
通説とされるアップグレード優先順位(ティア)
1. VIP (首長、政府関係者、広東映画スター・歌手等)
2. Marco Polo Club Diamond Plus会員
3. Marco Polo Club Diamond Invitation会員 Diamond会員
4. Marco Polo Club Gold会員
5. 業務で搭乗するCXのマネジメント社員
6. Oneworld他社のエメラルド会員
7. 業務や余暇で搭乗するCX/航空各社の社員
8. Oneworld他社のサファイア会員
9. Marco Polo Club Silver
10. Oneworld他社のルビー会員
11. Marco Polo Club Green 会員
12. Asia Miles会員
13. Non status
広東映画スターが最上位にくる、というのがとても微笑ましいですね!
俯瞰してみると、Oneworld他社の上級会員(エメラルド・サファイア)が思いの外優遇されていることが分かります。昨年のマルコポーロクラブ改編により、CXのDIA会員・GOLD会員は大幅に減るでしょうから、特にエメラルド会員の方は従来よりもインボラ率は高まるような気がします。
また、過去にはチェックインの順番(BN: Boarding Number)が、インボラアップグレードのティアブレイク(同じティアの中でアップグレードされる人・されない人が出るとき)の優先順位として用いられると言われていました。これは、現在はもはや無意味のようです。従って「SEC1番とったぞー!」というのは自己満足に過ぎませんので、夜中まで頑張って起き続け、オンラインチェックイン開始のときを待つ必要はなくなりました。
基本的には、この優先順位に沿ってオペレーションされていると考えて良さそうです。この表を理解することは、期待値を適切にコントロールする上で大切だと思われます。
とはいうものの、通説には当然ながら例外が付きものです。
続いて、現場でのオペレーションには例外も多々存在しそうだと推測できるエピソードを共有します。
事例1: 優先順位が明らかに低い他社会員のアップグレード
これは、私が親しくさせてもらっている友人の事例です。
彼のステイタスはJGCサファイア。ド満席の羽田線にて、ビジネスクラスの予約を持っていました。
羽田線はDIA会員を始めとする所謂「マジモンの客」が非常に多いとされる、ドル箱路線です。上記の通説に基づけば、彼の優先順位は8番目。キャセイパシフィック航空のB747-400におけるFクラスは9席しか有りませんから、仮にオーバーセルしていても、彼がビジネス→ファーストクラスにインボラアップグレードされるとは考えにくいですね。
しかし、実際には見事ご当選。ジャンボの先っちょに搭乗し、濃密なサービスとともに快適な帰国便をエンジョイできたのでした。
このエピソードからは、その便の担当マネージャーや、期間ごとのマーケティング目標次第では、他社会員を自社会員より優先する場合もある、という事が推察されます。
確かに、自社会員にばかり手厚くしていては、いずれ先細っていくと考えられます。ここぞというときに、他社会員に飴玉を配り「当該路線でのキャセイ便の利用機会を増やしてやろう」「ややもしたら、マルコポーロクラブに引き込もう」と考えるのは自然ですし、合理的なことではないでしょうか。
当然ながら真実は確認しようがありませんが、こんな事例もあったという次第です。
事例2:Y→Jアップグレード4名!感じの良い方!!
これは私の体験談です。日本国内某空港から、台北経由香港行きに搭乗したときのことです。
この日は使用機材が通常の773Zから、77Gに変更になっていました。このせいか、GDS上でも、シートマップ上でもオーバーセルしているのが明らかで、エコノミークラスの予約を持っていた私も、ワクワクしながら空港に向かいました。
チェックインの時、カウンターの高さによってはグラウンドスタッフの方のメモが、丸見えになっていることがありますよね。この時も、まさにそういう状態になっており、CX嬢がカチャカチャ端末を操作している間に面白い文言が目に飛び込んできました。
「Y→Jアップグレード 4名 感じの良い方!!!」
のぞき込んだのではありませんよ。デカデカと書かれている上に、ご丁寧にぐるぐるぐるっと丸囲みまでされていたのです。当日のブリーフィングの最重要事項だったのでしょうか笑
仮に先述の通説の通り、インボラアップグレードが機械的に決定されているのであれば、このような注意書きは用を為しません。チェックインを担当するスタッフにもかなりの裁量が与えられている場合がある、という事が理解できる事例です。
キャセイパシフィック航空は、機内・地上通じて、お客と従業員の立場が比較的イーブンな航空会社だと感じています。基本的な考え方が欧米型で、「お客様は神様です」の日系航空会社とは、ある意味対極に位置すると言えましょう。
そんな土壌の中、この会社の便にムスっとした態度で乗るのはあらゆる側面において不利だと思います。乗務員には、感じの悪いお客には「それなりのレベルの接遇」をする権利が留保されているように見えますし、上記の某空港の事例では、せっかく手にしかけていたインボラアップグレードの権利が、指の間からスルスルスルっとこぼれ出て行ってしまう可能性すらあります。
あ、ちなみに、このケースでは無事にビジネスクラスの搭乗券を貰うことができました。元々アップグレードが決まっていたのか、「感じが良かった」ため押し込めたのかは不明です笑
何はともあれ、こればかりは郷に入っては郷に従え!です。キャセイに乗るときは「感じ良く」振る舞うことが大切だと思われます。
まずは、アイコンタクト&皆さんに挨拶するところから始めましょう!
まとめ
以上、キャセイパシフィック航空利用時のインボラアップグレードの発生条件、通説、例外事例に関して述べてきました。
ここ最近、予約のコントロールが心持ち堅めになっている印象があること、リージョナル路線においてビジネスクラスの少ない機材(33P)が増殖していることを考えると、中長期的にインボラアップグレード率は減少していくことと予想されます。
とはいうものの、依然として他の航空会社より高い確率で「よいこと」が起こるのは間違い有りません。この記事が、キャセイパシフィック航空搭乗時のお楽しみを強化する一助になれば幸いです。
なお、この記事に掲載されている情報は、公式情報でも、「中の人」から直接ヒアリングしたものでもありません。欧米の掲示板に載っている情報を俯瞰してまとめ、私の個人的な体験に基づいた見解を併記しているだけのものです。
実態と異なっていたとしても、一切の責任は持てませんので念のため。読者の皆様にはご賢察の程、お願いいたします。