【2017年冬スケ】エールフランスKLMがLCCを設立してアジア路線に就航?

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エールフランス-KLMグループは長距離路線を運航するLCCを設立し、2017年冬スケジュールからアジア路線に就航させる計画を明らかにしました。運賃水準が高止まりするアジア欧州路線に新風を吹き込むことになるのか、それとも空振りに終わるのか…就航路線等の詳細も含め、気になる所です。(画像出典 aviationreportglobal.com

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Air France Plans No-Frills Airline to Serve Asia, U.S.

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今回の記事の元ネタはこちら。WSJ.com より一部引用します。

By INTI LANDAURO and ROBERT WALL
Updated Nov. 3, 2016 8:33 a.m. ET

PARIS—Franco-Dutch airline operator Air France-KLM is rolling out a new medium-haul and long-haul budget airline that could service cities in the U.S. and Asia, its latest maneuver to take on low-cost rivals and Middle Eastern carriers.

The new airline, set to start flying on routes to Asia in the winter 2017, would take over some of the least profitable Air France services and will operate them with staff on lower salaries, the company said on Thursday. While the new airline would focus on flights to Asia initially, it could later fly planes across the Atlantic, the carrier said.

(中略)

Air France is playing catchup with Lufthansa, which has set up a discount long-haul business within its low-fare Eurowings unit, and with Air Canada’s Rouge unit also has begun transatlantic service.

Air France said it would transfer some of its pilots to the new unit. They would fly more hours for the same pay. The new airline would recruit new flight attendants, with fewer benefits than Air France crew currently enjoy.

That is all likely to set up the airline for new tensions with labor union, exacerbating tensions that have embroiled the airline for years. Last year, protests by employees turned violent, with executives fleeing protesters who ripped the shirt off one manager.

Service on the new line would be less lavish than on board Air France planes, but won’t be as austere as on discount carriers, the company said.

Air France-KLM has lost ground over many years to budget carriers within Europe such as Ryanair and U.K.-based easyJet PLC while it has faced rising competition from carriers such as Dubai-based Emirates Airline and Qatar Airways on long-haul routes in the relatively lucrative Asian market.

要点をまとめると:

・AF-KLMグループは2017年冬スケジュールの就航開始を目指し、長距離路線を受け持つLCCを設立。

・就航先はまずはアジア路線から。ライバルがすでにひしめく大西洋路線には、その後に参入する。

・この新設LCCによるサービスを展開することによって、より低コストなライバル(アジア系航空会社を念頭においている?)や中東系各社に対する競争力を取り戻す狙い

パイロットはAF本体から移籍させる構え。これまでと同じ給与で、今まで以上にガンガン飛んでもらう。客室乗務員は福利厚生等がっつり削った新契約をもとに新規雇用する。

・AF本体よりは簡素であるものの、一般的なLCCよりは充実したサービスを提供する予定。

とのこと。字面だけ追うとフムフムという感じですが、AFといえば近年労使交渉が紛糾している会社。直近の決算は悪くないようですが、そんな背景があるなかでこんな計画をぶち上げたら、また荒れそうです。

特に、同じ給与でより長時間の勤務を強いられることになるパイロットにとってはメリット皆無。どのようにして移籍者を選定するのかは不明ですが、非常に困難なプロセスであるような気がします。

 

軌道に乗せるのが難しい長距離路線のローコストキャリア

短距離路線に関しては、地域を問わずLCCが繁栄を謳歌している今日この頃ですが、舞台を長距離路線に移すと、だいぶ様相が変わってきます。

norwegian-air-shuttle(画像出典 Airliners.net

LCCの展開が最も活発だといえる大西洋航路であっても、安定してサービスを展開しているのは Norwegian Air Shuttle, West Jet, WOW くらい。

 

欧州やアジアのリージョナル路線と比較するとLCCの存在感は圧倒的に希薄ですし、多くの路線が4,000マイル以内におさまります。実質的には「中距離路線」にカテゴライズしたほうが良いのではないかと思えるほどです。

ac_rouge_767(画像出典 wikipedia )

太平洋路線に関しては、Air Canada Rouge がまさに紅一点のごとく頑張っています。しかしこれは純然たるLCCとは言いがたい感じも…AC本体で運航するにはコスト的に厳しい路線を新会社に振ったというのが実態でしょう。

アジア欧州間路線に関してはもっと酷くて、死屍累々です。

記憶に新しいのはAir Asia X。2012年にロンドン・ガトウィック線とパリ・オルリー線を新設しましたが、一年ともたずに撤退。

airasiax_a330(画像出典 planespotters.net

ほぼ同時期に香港航空(これは厳密にはLCCではないですが)がロンドン線に就航するも、こちらも上手く行かず一年以内に運航休止。

もう少し時代を遡るとOasis Hong Kongという会社もありました。シンガポール航空から中古のメガトップを購入し、ロンドン線就航を企てたものの大失敗。こちらは会社そのものが消滅してしまいました。

oasis_hk_747(画像出典 planespotters.net

現時点で存在するのは、LH傘下のEurowingsが飛ばすバンコク・プーケット路線くらいでしょうか。ドイツ〜タイ間はチャーター便も多く運航されていますから、これは悪くない路線選定だと思っています。長続きするかどうかは分かりませんが…

アジア欧州間は多くのルートで区間距離が6,000マイルを超えます。この為、ハイスペックで高価な機材が必要になりますし、機材や乗員のオペレーションも短距離路線のように高密度で行うことができません。

一便一便のターンアラウンドを切り詰め、クルーも極力外地ステイをさせない事で運航効率を上げ、低料金を実現するというLCCのモデルが成り立ちづらい条件が整っています。このため、これまでLCCがなかなか定着してこなかったのだと考えられます。

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まとめ

af-asia-network

この記事を読む限り、エールフランスーKLMが展開しようとしているLCCは、まずはAir Canada Rouge よりのものになるように推測されます。高コストなAFによる運航では採算ベースに乗せにくい路線(例えば上図でいうと、大阪、ソウル、武漢、バンガロールあたりになるのでしょうか…?)を新会社に振り替え、手堅く実績を作っていくのではないかと予想しています。

とはいうもののME3に対抗するためには、これだけでは手不足な感が否めません。より重要度の高い都市にも就航して行く必要がありそうですが、そうなると途端に懸念されるのがAF本体とのパイの食い合い。ややもするとやぶ蛇になり兼ねません。やはりレガシーキャリアによるLCCのオペレーションというのは難しいものだと、再実感させられるニュースなのでした。

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