【空飛ぶ蟹工船状態?】続発する British Airways ”Mixed Fleet” クルーによるストライキ

ba456-32運航乗務員・客室乗務員のストライキは欧州系航空会社のお家芸ですが、ここ最近は英国の翼 British Airways でもストライキ(未遂を含む)が増加中。この背景にあるのは、従来の客室乗務員よりも過酷な待遇下で勤務を強いられている “Mixed Fleet” と呼ばれるクルーと会社との間で発生している労使紛争です。

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2月に合計6日間が予定されている British Airways のストライキ

昨年末以来くすぶり続けているBAクルーのストライキ問題。直近でスト予告が発表されたのは2/5-7,2/9-11の合計6日間です

同社の客室乗務員のうち、2010年以降に採用された Mixed Fleet と呼ばれるクルーが乗務する路線が、ストライキの影響を受けるとみられています。

運航に大きな影響がでたルフトハンザやエールフランスのスト事例と比べて、影響範囲はさほど大きくなさそうですが、BAでも公式にアナウンスメントを発表しています。

曰く、「全てのお客は目的地まできちんと送り届けるので安心しろ」とのこと。

前半三日間については1/31付けで、後半三日間については2/2付けでリカバリープランを公開し、その内容はMy Bookingからも確認できるようになるようです。恐らくは、BA便内でのスケジュール変更や、他社便への振替が提案されることになるのでしょう。

そもそも “Mixed Fleet” とはなんぞや

BA_Mixed_2BAのロンドン・ヒースローベースの客室乗務員は3つのタイプに分類されます。(LGW/LCYベースはまた少し異なるようですが、ここでは割愛します。)

・World Wide Fleet (略称:WW)
・Euro Fleet (略称:EF)
・Mixed Fleet (略称:MF)

WWとEFは2009年までに採用された古いT&Cに基づいて勤務するグループです。相違点は担当路線で、WWクルーはBAの中距離・長距離国際線を担当。一方のEFクルーは欧州域内線を飛ぶことになります。しかしながらB767のように両者の垣根を越えて運航される機材の場合は、例えばマドリッド線の乗務にWWクルーが呼び出されたり、中距離路線にEFが乗務する…という事例もあるようです。

一方のMFは2010年以降に採用された(多くの場合において)若いクルー達。担当便は欧州域内便から長距離路線まで幅広く、まさに “Mixed” です。しかしながら勤務条件は古参組と比較して芳しくありません。強いて言えば、女性の乗務員はLovelyなBA帽子*を着用できるのがアドバンテージでしょうか。

*)WWクルーもA380-800やB787-8/-9に乗務する際は帽子を着用するようです。このあたりの区別は正直謎…。

BBCのドキュメンタリーで取り上げられている客室乗務員訓練生も、Mixed Fleetとして採用された人々です。

WW/MFクルーの違いが分かりやすくまとまっているのが下記の投稿です。以下、引用します。

Pax shouldn’t notice a difference from MF compared to a WW crew but in reality… when it comes to day to day operations MF seem to have more people that ‘are less bothered’ then WW.

The facts are:

WW

– Decent pay
– More experience
Most of them enjoy working for BA but I have found a few ones that are past their ‘best before’ date
– Legacy contract

MF

Bad pay (Most of them still live at home or share a house with other crew)
– Less experience
Some love it and some hate it. Most are young and keen to see the world and this is how they do it. Sadly some see the ‘working on the plane’ part as more of a chore rather than the job they are being paid to do.
– High turnover (Some see it as a very short term thing while they choose what to do with their lives, rumour is that it’s around 25% of that trained quit within the first 36mouths because of pay & low morale)
– On contract available for LHR based crew

うむむむ…申し訳ないですが、一乗客としては “enjoy working for BA” 率の高いWWクルーの乗務便に乗りたいなと思ってしまいます。

(噂とはいえ)研修終了後3年間での離職率が25%程度というのも、ちょっとヤバい感じですね。

天下の(?)British Airwaysでありながら、空飛ぶ蟹工船状態に陥っていることがうかがえます。

“Mixed Fleet”クルーの待遇は?

Googleで検索すると色々と情報が出てきますが、信憑性が高いのは2017/1/4付、英インディペンデント紙の記事でしょう。

After the bitter cabin crew dispute in 2010, which saw a series of walk-outs, British Airways started recruiting new flying staff on inferior terms. All new recruits at Heathrow are in an operation called Mixed Fleet, which now makes up 28 per cent of the cabin crew. Other Heathrow crew (the “old” lot) are in Eurofleet and Worldwide Fleet.

Mixed Fleet staff are unhappy about what their union, Unite, calls “poverty pay”. Len McCluskey, general secretary of Unite, says: “New entrants to ‘mixed fleet’ are paid a basic of £12,192 per annum” — though British Airways insists it’s checked all the pay slips and the least anyone earned was £21,151.

なるほど、基本給は年間 £12,192(日本円換算173万円程度)で、諸々の手当を加えても年収£21,151(同300万円前後)であることが分かります。

別のWEBサイトによると、税引き後の手取り月収は£1,250-1,600(175,000円〜224,000円)程度。ロンドンの物価を考えると、これだけで暮らしていくのは厳しそうです…

また、プロモーションによる昇給も鈍いようです。

Basic salary after promotion:
Qualified Cabin Crew – £13.000
World Class Cabin Crew – £14.000
Customer Service Manager – £25.000

最上位であるCSMに昇格しても当初基本給の2倍ですから、モチベーションに繋がらず、離職率が高いのも納得できます。(私が同じ立場なら、より好条件な案件が出次第、速攻移籍します)

レガシーを享受しながら楽しく働いているWWクルーの姿は嫌でも目に入るでしょうから「ちくしょーストライキうったるわ!!!」となるのもやむを得ない事であるように思えます。

“Mixed Fleet”担当路線はどうすれば調べられる?

British Airways cabin crew.
British Airways cabin crew.

British Airwaysとしては、異なる待遇の客室乗務員が存在することを積極的に外部に対して発信したくないようです。従って、MFクルーがどの路線を担当するかに関して明確な情報を出していません。

ここで再びご登場いただくのがFlyertalk先生。ここには”FlyerTalk Forums Thread Wiki: Mixed Fleet vs non Mixed Fleet routes”というドンピシャなスレッドが立てられており、随時アップデートされています。

2017/01/17現在のリストを引用すると:

■Longhaul
Abu Dhabi
Abuja
Atlanta
Austin
Bangkok (moves from WW to MF from March 2017)
Beijing (moves from WW to MF from March 2017)
Cairo
Calgary
Cape Town
Chicago
Houston
Johannesburg
Lagos
Las Vegas
Luanda
Miami
Muscat
Nairobi
Philadelphia
San Diego
San José, California
Santiago, Chile
Seattle
Shanghai
Singapore-Sydney (BA15/BA16)
Tel Aviv

■Shorthaul
Aberdeen
Basel
Belfast City
Bergen
Bilbao
Bologna
Budapest
Düsseldorf
Gibraltar
Gothenburg
Hamburg
Hanover
Helsinki
Ibiza
Kiev
Kos
Kraków
Las Palmas
Lisbon
Luxembourg
Mahon
Manchester
Marseille
Oslo
Palma
Paris–Orly
Pisa
Prague
Rhodes
St. Petersburg
Stavanger
Stuttgart
Venice
Vienna
Warsaw
Zagreb

となります。長距離に関しては、南アフリカ路線を除くと二線級といいますか…「BAの看板ルート」というような便は含まれていないように見えます。

クレイジーBAフライヤーのDRK曰く「東京便もちょっと前までは羽田線がMF路線だったのよー」とのことですが、現在はNRT/HND共にWW担当に変更になっています。また、バンコク路線は一時的にWW担当化されていたのが、3月から再びMF担当に戻ったりと、担当路線の入れ替えは割合頻繁に発生するようです。

意外なのは、インド路線がMF担当ルートに含まれていないこと。同じワンワールドに加盟する某社クルーの間では「圧倒的に不人気」と言われるインド線ですが、BAのWWクルーの間では不評ではないのでしょうかね。

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まとめ:【空飛ぶ蟹工船】続発する British Airways ”Mixed Fleet” クルーによるストライキ

ba456-14LCCの台頭で、従来型航空会社の経営環境が悪化していることは言うまでもありません。この為、民間航空輸送黄金時代に端を発する伝統的な好待遇が維持できない事自体は仕方のない事でしょう。

しかし、今回問題になっているBA Mixed Fleetチームの待遇は担当する業務内容に見合わない低水準であるように思います。IAGそのものの経営状態は決して悪くない状況ですから、低賃金でこき使われている彼らがストライキを企てるのを、非難することはできません。

サービス産業では、従業員のモチベーションが「商品価値」にダイレクトに反映されます。特にアップスケール寄りの領域(BAは間違いなくここに含まれるでしょう)では、最低限の生活を担保する賃金に加え「それなりの余裕」を従業員に与えられなければ、いずれは顧客の離反に繋がると思われます。また、金銭的・体力的な余裕なしに、一般教養を高めたり、業務に関連する領域の知識を深掘りしていくことを従業員に期待するというのは、なんともおかしな話です。

今後好待遇なWW/EF組が徐々にリタイアしていく中で、Mixed Fleetクルーの割合はますます高まっていくことでしょう。次世代のBAを担う彼らの待遇が、この流れの中で見直されることを祈るばかりです。

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